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【途中経過報告】 ウミガメ脱出装置の開発にむけて

 

【 混獲死するウミガメ 】

 

日本沿岸には多くのウミガメが生息していますが、中には漁業の網や針にかかって死んでしまうウミガメもいます。一方で、漁業者もウミガメが漁の中で死んでしまうことは望んでいません。そこで、須磨海浜水族園では日本ウミガメ協議会、漁業者、製網会社、国内外の研究者、担当行政などを含む多くの関係者らと協力し合いながら、死んでしまうウミガメを減らす取り組みを2010年から始めました。現在もその取り組みは続いていますが、その途中経過をお知らせします。

※ より詳しい報告は当園の季刊誌「うみと水ぞく」の2015年3月号に掲載されていますので、そちらも是非ご覧ください。

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【 脱出装置の開発にむけて 】

 

このプロジェクトでは海の中に沈んでいる形式の定置網を対象として、脱出装置の開発を進めています。呼吸をしたくなったウミガメは天井の網を突き上げながら海面へ行こうとするので、脱出装置は天井網に取り付け、ウミガメが押し上げる力で脱出口が開き、脱出後には自然と口が閉じるように設計しています。

 

 

【 脱出装置開発実験 】

   
C脱出するウミガメ-HP.jpg Gモデル網の中-HP.jpg
脱出するウミガメ モデル網の中
   

2010年から2014年にかけて4回の水槽実験と1回の操業実験を行いました。水槽実験とは水族園の大水槽で行った脱出装置の製作と改良のための実験で、操業実験とは水槽実験で出来た脱出装置を操業中の定置網に取り付け、野外での働きを検証するための実験です。
水族園の大水槽は本館に入ってすぐ正面に見え、水深が4m、容量は1200tあります。大水槽の中に魚捕部を模したモデル網を設置し、その天井に開けた穴の上に脱出装置を取り付けて、ウミガメが脱出できるか観察するのです。それぞれの脱出装置について複数回のテストを行い、脱出の試行回数、試行時間を記録し、時には魚群が脱出装置から逃げるか調べるためにブリを10~100匹網の中に入れました。一連の実験では改良型を含めて延べ33種類の脱出装置について計253回ものテストを行いました。なお、網内に入れるウミガメは疲れないよう毎回交代させています。
テストを重ねる中で、脱出装置を改良するための基本構造がようやくいくつか出来上がりました。微妙な調整や取り付け方の工夫を繰り返し、ようやく操業実験に進める脱出装置が出来上がったのです。操業実験は第3回の水槽実験の後、脱出成績の良かった脱出装置4種類について徳島県の定置網で実施しました。脱出装置はそれぞれ24時間程度連続で取り付け、バッテリー式の水中カメラで記録・観察し、脱出装置の動きや魚群が逃げていないかどうかを確認しました。この間には通常の操業(網あげ)も行い、網あげ作業に影響はあるかどうかも検証しています。残念ながら魚が逃げたどうかの検証は十分に行えませんでした。現在は第2回目の操業実験に向けて準備を進めており、逃げた魚をより確実に記録できるよう打ち合わせをし、水中映像の問題もほぼ解決されましたので、次回の実験では客観的な魚群の保持能力を検証できるはずです。

脱出装置の開発実験は操業中の定置網に取り付ける段階まで進みました。これからは実用化とともに普及も見すえ、様々な条件下での操業実験を重ね、脱出装置を付けてくれる網を増やしていかねばなりません。まだまだ道半ばですから、今後も停滞することなく前向きに進んで行きたいと思います。

H実験操業風景-HP.jpg実験操業風景
E実験モデル網-HP.jpg実験モデル網